石黒獣医科病院

院長室 Toshiharu Ishigro Official Blog

2010-02-09 02:53:39

ハワイ島コナコースト【連載・動物病院の四季】

テーマ:

【連載・動物病院の四季】

ハワイ島コナ、コーストの乾いた潮風が心地よいホテルのテラス。
家内がスズメやハトにパンくずをやっている。
一昨日よりも昨日、そして今朝。スズメたちが我々との距離を縮めてきた。
今一羽のスズメは私の手先30センチの距離だ。
今度は家内がバターピーナツを噛み砕いている。
『スズメに塩分、バターは良くないんじゃないか』
そんな私の助言に彼女は盛んに口の中で塩分、バターを取り除いている。
『ママ あのスズメはメタボだぜ』
『毎日、宿泊客からエサをもらっているみたいね。自然界のエサよりはるかに高カロリーよね』そんなことを言いながらも彼女は止めない。
ここの鳥は完全に人が与えるエサに依存し、自然界でエサを探す習性がなくなりつつある。
私はかねてより言い続けてきた。
『自然には絶対に手を触れないようにしましょう』
そんな私の主張とは裏腹に、こともあろうか家内が野鳥を餌付けしている。
人が餌付けする事により、人になつき易い特定の種が繁栄する。
それが本来の生態系バランスを崩している例は世界で枚挙にいとまが無い。
しかし今、私は考えを少々修正しようとしている。
この島ではもう何世代も前から人が餌付けをし、鳥は人に依存して生きる術を獲得した。完全な人為環境に適応した野生。これも進化の一端かもしれない。
人が小鳥に対し「かわいい」「手を差し伸べたい」と思う気持ちが変わらない以上、人は身近な鳥にエサを与え続けるだろう。
だったらまず、我々は人為環境と完全な自然環境を明確に区別して接するルールを作る必要があるのではないか。
触れる事がある程度許される野生とは何なのか。
4本目となるビールが私を思考の迷宮に誘いこむ。
この風が私にビールを空けさせる。


2010-01-30 03:37:14

北岡のおばちゃん【連載・動物病院の四季】

テーマ:動物病院の四季

【連載・動物病院の四季】

「おばちゃん 豚臭い車で悪いな」
昨日の予防接種の残り香、豚舎の臭いが強烈な車内。僕は北岡のおばちゃんを軽四輪に乗せて家まで送る途中である。

彼女はいつもの如く迷い込んできた家出猫を連れて診察にやって来た。年の瀬、12月の寒空を一時間も掛け、自転車に乗って。

「先生、一週間前私、軽い脳梗塞で入院したんよ」
そんな話聞いてしまったからには又一時間の夜道を自転車で帰すわけにはいかんじゃないか。彼女との付き合いはもう10年以上になる。今まで数多くの家出猫がその終末を迎えるため彼女の家を訪れた。例外なくボロボロにやせ細り、猫エイズあるいは猫白血病に侵され、余命幾ばくも無い体を引きずって北岡宅にたどり着いた。

「先生!又入りこんで来たんよ。もうだめだと思うけど、何とか少しだけ楽にしてやって」
70歳を過ぎた今も働きに出るおばちゃん。その僅かな稼ぎを握りしめ、私を見詰める。

「北岡さん、不思議だよな。猫も最後に頼る処が解るんだ」
「先は見えているが少しでも気分良くしような。じゃーいつも通り、すべて込みの料金で」
そんなやり取りが何回とも無く続いてきた。

しかし今回の車内で語る彼女の話に私は受け答えの言葉も無く、逃げ出したい衝動にハンドル操作がぎこちない。彼女は25歳で夫と死別し、以来3人の子供を育て上げた。昼はスーパーのレジ打ち、夜は工事現場の交通整理で稼ぎ、睡眠時間を3時間に削って、分譲住宅のローンも完済したと言う。

それだけでも並大抵の人生ではなかったはずなのに。今日連れてきた猫に重ねて語る彼女の娘さんの話に私は足腰が立たない。娘さんは2人の子持ち、40歳すぎか。乳がんの全身転移。後少しの命だと言う。

「娘はかなりの痛みなのに、愚痴一つ言わんのだわ。この猫が娘と重なって」

おばちゃんと自転車を下ろし、
「それじゃーまた」

そんなことしか言えない私には今夜の寒風がつら過ぎる。
 
 
 

2010-01-29 15:34:04

『動物病院の四季』続編シリーズ連載のお知らせ

テーマ:お知らせ

一昨年、共同通信の配信で全国の地方紙にて連載を行いました『動物病院の四季』が思わぬご好評を頂きました。私はそれをこんな場末の瑣末な日常の取るに足らない拘りへの連帯のエールであったと感じたのです。一瞬で型を失う泡沫のごとき善意がこの世の中を満たしているとの確信でもありました。

幸いにも続編シリーズのオファーを頂き、昨秋、連載が終了しましたのでブログ上での連載を開始します。

回を重ねるごとに自らの股間の矮小さを恥じ入るがごとき思いが沈殿します。

―身の丈を超えず地を這う―そんなことを自らに再確認する厳冬の夜です。

御高覧、ご講評をいただければ幸いです。
 
 
 

2010-01-01 02:04:33

新年明けましておめでとうございます。

テーマ:

今 新年午前一時半。
おせち料理の『黒豆』の鍋の火加減を気にしつつ、旧年中の御厚情への感謝と、新年の御挨拶を申し上げます。

背中で暖炉の日が燃えています。ポカポカと暖かい!
今僕はこの暖かさを昨年の一年に重ねています。
一度は別れを覚悟した家内が12月14日に無時帰りました。
一年に及ぶ病との闘いに耐え、元気に戻りました。
今僕は『家族が揃って迎える大晦日』の極めて当たり前の日常の幸せを噛締めています。
当たり前の、去年と何一つ変わらない大晦日がいかに大切なものか!
それが多くの善意に支えられた結果である事に感謝の言葉を失っています。
皆さんの支援あっての2009年でありました。
省みれば家内にとって苦闘の一年も我が家にとっては豊饒の一年であッたかもしれません。
『ヒトの温み』を実感させてくれた一年でありました。

皆さんの御好意を少しでも大きくして更に多くの人々に返してゆく。
それを重圧ではなく、励みとすべき覚悟をする新年です。
更なる叱咤激励をお願いし、ご挨拶とします。

石黒獣医科医院  院長 石黒利治


2009-07-02 14:14:53

夜間救急動物病院が開院します

テーマ:お知らせ

夜間救急動物病院

7月5日、岐阜県獣医師会 夜間救急動物病院がオープンします。

大切なあなたの「家族」を、いつも見守りたい。
そんな思いから、岐阜県中の獣医師が協力してできた、 夜間動物病院です。

夜間の事故や急病に対応します。


岐阜県獣医師会 夜間救急動物病院
TEL:058-242-9915
※来院前に必ずお電話でご連絡ください。

〒500-8258 岐阜市西川手6丁目41番地
診察時間:午後9時から翌朝1時まで 年中無休

http://www.gifuyakan.jp/


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プロフィール
石黒獣医科医院院長
1948年生まれ
帯広畜産大学獣医学科卒業
石黒獣医科医院 院長
岐阜県獣医師会 夜間救急動物病院 院長
獣医学知識、技術に関しては特筆すべきもの全くなし。
渓流釣りから海釣り、ラン栽培、スキー、登山、マリンスポーツ、「ウドン打ち」に至るまで自称「鬼才」::: 所謂 道楽人。
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