石黒獣医科病院

院長室 Toshiharu Ishigro Official Blog

2007-01-19 11:16:49

タヒチ・アドベンチャークルーズ航海日誌・5 【10月4日】

テーマ:旅行記

6時30分起床
朝食はいつもと変わらず。

近くのフィシュパーク沖に移動。デンギーにてパークへ上陸。サメ、カスミアジ、エイ、赤ウミガメ、ナポレオンフィシュのそれぞれの観光用ふれあい生簀が設置され、観光客が生簀に入り至近距離で観察できるようになっている。ここでとんでもないアクシデント発生!!!1m近いカスミアジの群れる生簀に入り右手に餌の小魚を持て、それに飛びつくアジと戯れているその時、餌の小魚の奪い合いに興奮したアジが何も持ってない左手にアタック!!!親指の爪を割られ、手の甲は擦過傷、けっこうな出血に加え激しい痛み。ロッジにて応急手当の消毒とバンドエイドで浮いた爪を固定する。100分の1秒の時間差で指ごと噛み千切られるところであった。パークのオーナーが家内に向かって、笑いながら曰く「奥さんご主人のあそこでなくてよかったね?」だって!! 「バカヤロー!!人の痛みも知らないで!!」
思わず両手で股間を押さえる情けなさ!!

:::これがもし日本なら新聞記事にでもなるところ、例えばこんな見出し:::  
「テーマパークで観光客が魚に指を噛まれ2週間の怪我。施設の安全管理に問題点」
何でもありのフランス気質。人の不幸も冗談に変える。これも案外と鎮痛効果がある。

昼食
ハム8種類(パプリキアハム、ロースハム、ソフトサラミ、サラミ、赤いブツブツのハム)キュウリのサラダ、グリーンレタスにダックのハム添えサラダ)チーズ

午後
パールファームを訪問。黒真珠の養殖について説明を受ける。20年程前日本の技術者が伝えた純然たるジャパニーズテクノロジー。


:::人としての有り様を教えられる桟橋:::
昨夜のポリネシアンレストランで少々感動的な出来事があった。食事後、桟橋で迎えのボートを待っていた時、3人のポリネシアンが僕たちを取り囲み、突然まくしたて始めた。
「You is japone? You is japone?」
「アリガトウ」 「コンチワ」 「サヨウナラ」
 口吻泡を飛ばすごとくの何か異様な熱気!最初は嘗て来た日本人観光客から教えられた日本語を披露しての歓迎かと思いきや、少々違うようだ。よく聞いてみるとポリネイア語とフランス語、片言英語のごちゃ混ぜの中から「オカモトさんが20年前この島にやって来た」と言っている様子。次に聞き取れたのは「ブラックパールテクノロジー」
「ミキモト」::::::::::「アリガトウ」そして又「アリガトウ」の連呼:::::
酒でとろけ始めた脳みそをフル回転し、想像力を駆使して、言葉の断片を繋げてゆく。ええ加減なうけ受け答えと愛想笑いで時間を稼ぎながら言葉のピースを組み立てて行く。
そしてこのパズルの全貌が突然明らかとなる。
まだ穴あきだらけで詳細は掴めないパズルだが、話はこうだ。「20年程前にミキモト真珠と言う日本の会社から岡本と名のる技術者が真珠の養殖技術をこのTAHHA島に伝えにやって来た。彼は心血を注いで島民への技術移転を行った。そのおかげで今やこの島は良質な黒真珠の産地となり、島民は大いに助かっている。我々は岡本さんに大変感謝している。日本人は最高だ。」
彼らの握手にこめられた力の意味を知った時、僕は目頭の熱くなるのを感じていた。
岡本さんの努力が島人に職を生み出し、島民の生活を豊かにした。日本人が手がけ、育てた真珠の養殖技術がこんな南太平洋辺境の小島で花開き、世界から高い評価を得る産業に成長している。世界に冠たるタヒチの黒真珠は日本人が種を撒き、世界中の女性の胸に輝く。しかしそれ以上に、僕は静かな、染透るような感動に浸っていた。彼らが僕に伝えよう、語ろうとしているのは岡本さんが伝えた養殖技術の恩恵だけではない。彼らは岡本さんから受けた感動を語ろうとしているのだ。「日の丸を背負わず」「ばら撒きの援助資金がなくとも」人が人に伝え得る「誠」とは何かを、人が人になしうる献身とは何かを、その恩義に対する感謝を伝える事で語ろうとしているのだ。
この時僕は何故か映画「蝉しぐれ」の数々のシーンを思い出していた。
息子との最後の別れを終え切腹に赴く名優緒方拳演じる牧助左衛門の後姿、
「おふく」からの最後の手紙を読む船上の牧文四郎を演じる染五郎を。
彼が島人に伝えたのは日本人としての凛とした立ち姿ではなかったか。
只凛としてあることにより伝わる人としての有り様ではかったか?
20年もの間、島人は彼を語り継ぐことで、彼を知った感激と彼の貢献に対する恩義に報いようとしているのではないか。
人が人に対して人として本来あるべき姿を教えられた夜であった。
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養殖真珠の説明の後は無論黒真珠のセールスが始まる。マダムがまずは最高級品の加工前の真珠から順次B級更に下位のランクへ。次に一連100万円を越すネックレスから2,3万円の小玉のピアスへと購入意欲を巧みに誘導する。マダムが今売ろうとしている価格帯は5万から15万円と見た。この価格帯の商品が一番多い。観光記念でそれも産地直売所では一寸買う決断が出来ない100万円の高級品を丁寧に紹介した後、自分が売りたい、一方お客にとっては衝動買いをしやすい価格帯の、豊富な商品を適度なタイミングでテーブルに並べてゆく。商品構成といい、出てくる商品の価格順序といい、絶妙な時間配分に至っては当にプロ、これぞ販売のプロ!!私もまんまと術中に嵌り結婚30週年記念のプレゼントの実現となった次第であった。 実は正直予算よ少々安上がりでニンマリ!!
今日のサンセットは又格別なり、でも若干雲多く、太陽の沈む位置にも難あり。
RAIATEA島ヨットハーバーに移動、なんとキャプテンのヨットが係留されている。世界を回ったヨットだそうだ。    ここで再び体中を揺さぶる衝撃が襲う。


:::人を知る感動:::
 夕日に輝く深紅に黒いストライプのアルミ製ヨット(一本マスト遠洋航海型クルーザー)を指差し、キャサリンが誇らしげに告げる。夕日に輝く満面の笑みが美しい!!!!  
「That‘s my house」
この一言が突然喚起するカルチャーショック。家内にも同じ感慨が浮かんだのか。
「パパ!あれが彼らのお家よ!あれが全部なのよ!」
「どこか他にお家を持っているの?」
「あんな小さなヨットにはそんなに荷物積めないよねー」
「家財道具なんてもってないんだー・・・・」
「あれが彼らの全部なんだあー、それだけで十分なんだ」
「そんなに、あれもこれもいらないんだよね・・・・」  「凄いねー・・・・・凄いー・・・!!!」
僕たちには彼等の生き方と現状を理解する尺度がないことにしばし呆然とする。
その夜彼とキャサリンから今までの航海の軌跡の一端を聞くことが出来た。
彼は何年も前からヨットに乗って世界の海を放浪している。ホーン岬の荒海は凄かったそうだ。
グリーンランドではイヌイットと共に越冬、これはDVD化され市販されている。
現在はポリネシアにたどり着いて、資金調達を目的にクルーズ会社の船長をしているのだと言う。
あと一年間今の会社で働いて、フレンチポリネシアを回った後、ニュージーランド、オーストラリアに行き、4年後には日本を訪問したいと語る。再会の期待にワクワクする。
この5日間、私達8人の船客を包み込む柔らかな風を生み出す源泉が次第と明らかとなる。
何物にも囚われない自由な精神が醸し出す芳香に満ちた微風の源に納得する。
数々の苦闘の航海によって培われた彼らの笑顔が何と屈託のないことか?
現代人、特に今の日本人はあまりにも所有するモノ(お金を含めて)が多過ぎはしないか?
あまりにも社会的、世間的シガラミや立場に縛られてはいないか?
我々が日常的に大切と思っている有形、無形なモノって本当はまったく空疎な代物なのかもしれない。欲望がさまざまな形で投影する単なる幻影に踊らされる毎日なのかもしれない。:::と言う懐疑

生まれ変わっても僕たちには到底真似できない人生だろう。
知らなくても済み、知っても何ぼのモノでもない他人の人生に過ぎない。
しかし珠玉の命の輝きが人を自然と素直にする。静かな潤いに満ちた感動が全身に染み渡る。
人を知る喜びに満ちた夜、東の空に上る月は満月に近い。
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夕食  ラムのソテーにインゲン豆、ポテト添え

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